無線電信の巧みと技

William G.Pierpont N0HFF

-改訂2版-

第30章  キャンドラー方式

   
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符号学習に関するいかなる論文も、この有名で長年広告されたコースに触れないものはありません。

背景
1904年までにウォルター・キャンドラー(
Walter H. Candler)はアメリカンモールスコードを習得し、2年間電信技士として働きました。 彼は熱心に練習し、アトランタのウエスタン・ユニオン事務所のプロの交換オペレータとなるために問題が無いだけの技能があると思いました。しかし、彼はそこには1日も行くことなく、小さな町の有線電信士としてシフト勤務をさせられました。彼は深く傷つき困惑しました。何が問題だったのか? なにか見落とした、未知の要素があったのでしょうか?

最高の電信学校の慣習として、彼はモールスコードを印刷された符号表の短点と長点として視覚的に覚えました。そして、練習に次ぐ練習を重ねました。 (この「標準」手順は有名なドッジ大学の元教師――後の"Radio Shortkut"のC.K.ドッジとは無関係――により確認されましたある夜、仕事中、極めて偶然に、ちょっと居眠りをした時に、かれのサウンダ-に入ってきた一番早い信号を受信できたことに気がつきました。はっきり目覚めているときにはその内の一部しか受信できなかったものです。

それ以来、電信の基本は精神的プロセスにあると考え始めました。そして、いわゆる「潜在意識」がその重要な役割をするということです。(その当時「潜在意識」に関する有名な著作はほとんど無く、彼の考えをまとめる助けはありませんでした) 彼は自分抱えている問題を解決するまで実験を重ね、ついに自分自身で符号をマスターし、同時に他にやり方を教えるようになりました。1911年までに、彼は「キャンドラー方式」を教えるためにシカゴに自分の「学校」を設立しました。後に学校はアシェビルに移りました。

彼は1940年4月23日に亡くなりましたが、彼の妻(結婚した1924年に既に経験をつんだ電信技士だった)が何年も学校を続けました。(最後の広告は1959年のQST)
 

コース
元々彼の「高速」コースは既にアメリカンモールスを「知っている」が、遅いスピードで留まっているオペレータの為に開発されたものです。
後日、インターナショナルコードのコースも追加されました。さらに、初心者が独学できる、「科学的コード」コースが追加されました。これは「高速」コースを初心者から始められるように修正したものでした。(全てに「高速」コースは含まれていました) この初心者向けコースは後に「ジュニアコード」コースと改名されました。 1939年に、それを私は使い、感心しました。

それは、細部については年々マイナーな変更はあったものの、骨格となるエッセンスは非常にしっかりとしたものでした。 彼の基本ポリシー:「このシステムはあなたの 心(MIND)を使わせるように訓練し、科学的にあなたの調整能力、集中力と自身――あなたの感性を開発します。」 コースは10のレッスンと非常に有益な補足材料(多くは単語)で構成されていました。 それは次ぎのようなものです。
 

基本的原理
キャンドラーはプロのオペレータになる訓練を考えたので、最初に健康な生活、食事、運動、呼吸、等の重要性を強調しました。
この強調は当時の典型的な町のオペレータが、不健康な煙の充満する、不潔で、ごみごみした、換気の悪い、ところで長時間働いていたために必要でした。

1)「音に対する意識」を開発する: レッスン7に書いています):「符号を覚えるとき、送受信ともに意識的に短点と長点を数える必要があります。 受信するとき、潜在的意識がだんだん、数えることを無くして行きます。 意識的に数えている限り、あなたは遅いままです。しかし、潜在意識が取って代わると、ぐんぐん早くなります。」「先進するにつれて、」「映像的なものより音声パターンにより簡単に反応するようになります。あなたは、意識的にたくさんの短点と長点が文字を構成していると考えて数えている限り、符号を習得していることになりません。 ですから、「あなたが トツー と聞けば、「トツー Aだ」と言うのはやめて、その代わりに、トツー と聞いたら、Aと聞こえるようにするのです。変換しないことです。」「符号を学習するときに単語を再学習する必要はありません。しかし、アプローチを変えねばなりません視覚的から音声的へ 一旦これを意識的にマスターすれば、潜在意識が細かな部分をやってくれ、意識的作業よりも早く良い仕事をしてくれるようになります。

評論:私達は、彼と彼の多くの生徒が既に視覚的に「覚えた」人達で、いまこれを直接音からの変換に変更しなければならないという立場にあったことに留意しなければなりません。そこには、彼等が総じてある遅い速度で行き詰まっていたという理由があります。 当時の伝統的アプローチは彼の思考に目隠しをしてしまい、彼は自分提唱した方法から初心者は音声だけでスタートすべきであるという考えにはつながらず、やっかいなハードルを越えなければならない初心者を救うことにはならなかったのです。

2)あなたの潜在意識はあなたが意識的にするように訓練されたことしかしません。 従って、潜在意識に正しい方法同じ方法を最初から一貫して教えるのです。 積極的に考え、行動しましょう:(「私はできる」姿勢です)。 もし積極的姿勢で一貫して練習すれば、潜在意識はその仕事をより早く取り込んで、やる毎に簡単になっていきます。 最初は意識的に通常の日課を原則通り学習し、次第に、支持通り練習すれば、潜在意識が仕事を取って代わり、意識的努力はだんだん不要になり、進歩を感じることでしょう。

3)符号を読むこと、受信することを習得するのは重要なことです。 すなわち、書き留めることなく理解すること。 読むということは、通常の印刷物を読むようにあるいは誰かがしゃべっているのを聞くように、言われていることを聞いて、理解することです。 符号を読むことはコピーすることに決して左右されてはなりません。 全ての文字を覚えたらすぐに、自分の受信機で(あるいは今なら、練習テープなどで)良い符号送信を聞くことを始めてください。 一回5、10、15分あるいは疲れるまで――たとえ連続する信号を一つの単語に認識できなくても。 続けてることです、そうすればまもなく小さな単語がキャッチできるようになり、さらに長い単語も分かるようになってきます。 しかし、決して一度に疲れるほど長時間練習しないでください。
私は、いま単語を潜在的に読む能力をてにいれました。
符号を読むとき、それが聞こえてきたときに意識的にスペルアウトしないにもかかわらず、その単語が何かわかります。」と生徒が書いています。

4)読めない(受信できない)ものは書けない これは受信することを練習したあとの第2段階です。 あなたが受信したものを書き下すことはあなたが適切に訓練を受けていれば自然にできるルーチンワークです。 もちろん、アルファベットや数字を習っている初期段階であれば、読むときがそうだったように、1文字づつゆっくりとコピーしなければならないでしょう。 この後、15~25wpmでコピーしないで聞いて読めるようになるまで一旦ストップして、各受信練習期間にコピー少し始めるべきでしょう。 次ぎのように始めます:毎日10~15分コピーします。1文字かそれ以上遅れてコピーするように頑張る。そして、同じ時間、書かないでただ聞きます。

5)コピーするとき、遅れコピーを覚えます。 もし、それまで1文字ごとにコピーをしていたなら、系統的にそれを止めて行きます。 最良の方法は、良い符号を聞いて、コピーしないで読み取る習慣をつけることです。 日々の練習で、独立した符号の読み取りに慣れてきたら、失うことを心配せずに、いくつかの信号を遅れてコピーできるでしょう。 心の中に文字を保つ習慣をつけて、書き留めること無しに、潜在的にそれを文字と文章に組み立てるのです。 目で見るのと同じように、音を聞いて短い単語を読めるようになったときは喜びました。 すぐに、頭の中で言葉を読むことを覚えました。 その後、鉛筆でそれを書くのは容易いことでした。 それまで私は、1文字ずつ書いていましたが、それは間違いでした!」と、ある生徒は書いています。

6)知的に練習する: 正しい方法で、毎日、定期的に、短時間そして十分間隔を空けて、目的を持って。 間違った練習をしないこと。 疲れているときの練習は時間の効果的使い方ではありません。 良いスケジュールは、1日30分、午前中15分と午後又は夜に15分です。 練習の間の時間は重要です。その時間を、やろうとしていることに対する積極的な姿勢の促進を受け入れる準備に使ってください。 これらの原則を留意した10のレッスンを初心者のために用意しました。 当時の生徒は聞こえるとおりの短点と長点で考えるようにいわれていましたので、キャンドラーの文字グループの学習法は古い視覚的短点と長点の記憶の上に紹介されたわけです。 従い、生徒がその新しい練習をこなすのに1から2週間はかかるだろうと考えていました。

レッスン :音声の単位を強調する。 最初のグループは E I S H でした。生徒は自分の電鍵でスムーズに、正しく、正確なタイミングで、「トン」といいながら送信しました。 キャンドラーはこの練習を2人以上で行ない、それぞれ送り手、受け手になってやってみることを勧めました。 これらが容易に認識できるようになると、"he, is, see, his, she." といった単語を使いました。 次ぎに T M O に取りかかり、同じように、「ツー」といいながら送信します。 そして前回同様、短い単語を練習します。 最後に A N W G を練習します。 そして、これまでの11文字を使って表現できるかぎりの単語を頻出100語から抽出して練習します。 ある時期キャンドラーは独学の初心者向けに、テレプレックスのような機械送信を販売あるいは推奨しました。 これは正確なタイミングの感覚と良いヒアリングの練習になりました。 機械や練習相手によって、生徒は聞くことができ、初期段階では1文字聞く毎にですが、コピーもできるでしょう。

レッスン 視覚ではなく音の短点と長点で文字を考えることを強調する。 新しいグループ D U V J B;  R K L F;  P X Z C Y Q をレッスン1同様に学習する。 頻出100語から短い単語を練習に含めます。 正確なタイミングと繰り返しの練習が習慣(良かろうと悪かろうと)を構築します。

レッスン あなたは正しいことを強調し、先に進み、繰り返し練習により習慣とする。 符号による文字、信号の正確さ、スペーシングとスピード、正確さを分析する。 立ち止まったり考えたりせず、聞いた文字を即座に認識する習慣をつける。 各信号とそれに対応する文字の自動的関連付けを習慣つける。 また、この段階で、数字と良く使う記号を覚えます。 文字を全て覚えたら、「立ち止まって考える」ことがありませんからどんな短点、長点の組み合わせも心配ありません。 良い符号を毎日定期的にコピーしないでたとえ5分間でも良いから聞きましょう。 (当時ラジオには良い符号の材料がありました:商業プレス通信、政府管轄局は1日24時間聞けました。 今は、ARRL符号練習、テープなどがあります。) 聞いたとおりできるだけ全てをキャッチします。 最初はそんなに多くを得られないでしょう、でも続けることです、そうすれば程なく文字と単語が聞こえるようになります。

レッスン 符号学習は簡単なものであると考える。 潜在意識がそれをしてくれると信じることです。 特に間違えやすい文字を繰り返し自動的に認識できるまで練習する。 各文字はそれぞれきっちりと認識できるように。 頻出100語のドリル演習を送受信とも続けます。 「2列ドリル」演習を始めます。2つの3か4文字の同じ文字数の単語の列を用意して、1つの列を下記ながら、もう一方の列を声を出して読み上げます。 列を入れ替えて同じことをします。 第8章、「失う恐怖の克服」第3段落参照) 1文字か2文字遅れてコピーすることを練習する最初の簡単な演習をします。

レッスン 全ての文字と記号が良く分かるように――送信でも受信でも――立ち止まらず、考えず。 頻出100語の練習をする。 レッスン4で始めた「2列ドリル」を続け、少し長い単語にする。 これは潜在意識の働きを呼び起こし、意識的注目を取り除く一助になります。 この種の練習を簡単と感じるまで信じて続けましょう。 これは、意識的認識から潜在的認識に変えていくために非常に有効な方法です。 この練習により、潜在意識は有用な習慣を形成します。

レッスン 技能の開発は、全てがスムーズに行くように調整することを開発することです。 それは、定期的な受信練習で始まり、一貫した完全な符号を送信し、各信号を即座に認識することを習得し、簡単に読み取ることを習得し、コピーの際は均等、簡素に書くように練習します。 躊躇や疑問が無いか確認しながら、もしあればそれを解決しながら進めます。 注目して、自然に、習慣的にできるまで練習に時間を割いてください。 これが科学的な方法です。 5文字の混合された単語のグループをコピーする練習をしますが、ここで1グループ毎に書くのではなく、全グループの送信が終わってから書きます。グループ間は十分広いスペースを開けます。(彼の強調点は、コースを通して通常の英語の受信とコピーでした。暗語の受信ではありません。)

レッスン 送信中の適切なタイミングを強調する。 スペースを十分取ったEの連続の送信から始めます。 最初は文字間隔として6カウント開け、次第に通常のスペースに近づけて行きます。 そして、同じように S,  T,  H,  O, 等について行ないます。(カウントについては"音に対する意識、評論"を参照)

レッスン 「手崩れ」すなわち電信士の麻痺に関する議論。 その防止法。 リラックスと適切なウォームアップ。 基本的カウント練習。

レッスン 進歩を阻害するもの:

レッスン 10 遅れコピーの練習を続け、心の中で単語が扱えるようになる。 素早く読みやすく書くことを習得することは受信のためにもなる。 タイプライターでコピーすることを習得する。 (このための特別コースあり) 第二の性質になるまで続けること。
 

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