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Unforgettable Brass Pounders 10
97/12/28

N5VV, Kurt, はエレガントでチャーミングなCWを打つ。彼の用いているコリンズのSラインが、以前アップした通り、美しいCWを生み出す機械であることにもよるが、彼のキーイングには絶妙な間の取り方があるのだ。単語間の「間」が、素晴らしい。

JA1NUT DE N5VV SEE U

等と交信の最後に打ってくるが、ほれぼれするようなキーイングだ。この場合で言えば、JA1NUT と DE、 DEとN5VV, N5VVとSEE、SEEとUの間の間隔が、本来あるべきスペースより、心持ち長めになっている。長めというと、間延びしたスペースと受け取られてしまうが、断じてそうではない。JA1NUTの後のDEが、本来打たれるべきタイミングよりほんのわずか遅れる、又は待って打ち出されるのである。また、スペース間にもある種の揺らぎがあり、それも聞いていて心地よい。全てのスペースを同様に長めにすると間延びしてしまうのは必至だ。文字間のスペースは、むしろつまり気味で、それが心持ち長めの単語間のスペースを強調する効果を与える。

こう記してみても、百聞は一読にしかず!であり、是非彼の信号を聞いてみて欲しい。Kurt以外に、同様の美しいキーイングを見せるCWerは、K5BGB、W7ZQ、G3SXW等がいる。エレキーだから誰が打っても同じだろうと考えたら大間違いで、CWを始めた時期にどのような美しいキーイングに接し、それを目標にするかどうか、でその後の上達は大いに違ってくると思う。

Kurtはジャズのべーシスト。50歳台半ばになろうか。New Mexicoの田舎町で、Angelというコリー犬と暮らしている。ギタリストのTedescoとsessionを持ったこともあると言っていた。私がチェロを多少弾くことを知っており、よいCWoperatorになるためには、音楽の素養・素質が必要だと、彼はよく言うが、これは公理ではなさそうだ。上記のK5BGBは銀行員でテニスプレ-ヤー、W7ZQは退職した電子工学専門の大学教授、G3SXWはマーケットリサーチャーで皆音楽とは直接の関係の無い生活をしている。私もどちらかというとリズム音痴の類である。ただ、先に述べた「間」の取り方は、やはり音楽的な感性を必要とするもののようだ。Kurtは、時々演奏旅行に出かけるようで、さっぱり聞えなくなることがある。この1,2年あまり聞えてこない。ベースを抱えてAngelと一緒にアメリカのどこかを旅しているのだろうか。

鬼澤信
JA1NUT