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Unforgettable Brass Pounders 14
98/01/05

1960年台当時私のつたないラグチューの相手をして下さった方に、9V1MT、Harry、がいる。当時50歳前後であったろうか、彼に頂いた彼の写真が今でも手元にある。彼は、シンガポールで軍関係の仕事をしておられた。古めかしくなった白黒の写真の中で、彼は、どこか明るい色のパネルのメーカー製のリグの前に座り、斜めに構えにっこり笑いかけている。7メガで9Vは南北のパスのために交信しやすく、当時も長時間安定したパスが開けたのだろう。彼はバグキーで流れるような符号を打っていた。今記憶に残っている彼の信号の響きは、透明感のある美しいもので、最近(のリグで)は聞くことができないものだ。私の記憶の中に彼の符号がどうしてこのように美しいものとして残っているのか、しばらく考えていたが、次のような可能性がありそうだ。

1)過去の思い出を私が意識的にまたは意識下で美化している。感受性の豊かな時期に、容易に訪れることのできぬ国からの信号を耳にしたときの感銘は想像を超えて大きいものがあったことだろう。

2)私の老化現象の一つとして、高音域の聴力が衰え始め、音色を決定する音域を聴取出来なくなり始めている。

3)最近のリグではPLL・多段のコンバージョンの使用に伴い、送受信で可聴域での歪みが増加している。最近のリグの設計をされている方にはactiveなCWオペはいないような気がする。また、いたとしてもminorityのCW族に喜ばれる機能・性能を優先的にリグに搭載するのは、採算が取れないのだろうか。

1,2の可能性は、検証の仕様が無いが、3は今でも用いられているコーリンズのSラインまたはデリカの受信機(これは現用ではないか?)ででもCWを聞いてみれば検証できるだろう。何時かじっくり聞いてみたいものだ。

Harryはその後リタイアし、イギリスに戻った。G3ATHというコールで出ていることを知った私は、数年前のある日あるGの局に彼へ電話をかけてもらい14メガのCWに出て頂いた。
コンデションは悪くはなかったのだが、彼の信号はノイズすれすれでのんびりラグチューするわけにはいかなかった。その後頂いたQSLによると、ベアフットにワイアーアンテナという設備とのこと。元気で過ごしておられるということであった。

鬼澤信
JA1NUT