スプリット運用とは?


 HF帯で運用していると、多かれ少なかれこういう経験をされたことがありませんか。突然、ある周波数に2〜3局が自局のコールサインを送信してスタンバイしてしまう。また数十秒後に送信する。あるいはある周波数範囲(3KHzから10KHz程度の範囲)に何十局という局が先ほどと同じように一斉に自局のコールサインを連呼し始める。
 連呼している局の中にまだCFM出来ていないJCCの局がいたりするとその局を呼んだりした経験はありませんか?
 こういう場合連呼している局の下の周波数を注意深く受信してみましょう。「JA1○×△ Ur 599」とひたすら相手のコールサインとRSTレポートを送出する局がいます。つまり送信周波数と受信周波数が異なるいわゆるスプリットQSOという交信方法です。スプリットQSOがどんなものかはご存知の方も多いのですが、実際ワッチしていてとっさに、スプリットだと判断できる方は、DXをよくやられる方以外は少ないのではないでしょうか。もっとも国内QSOではよほどの珍局でないと必要ないでしょう。時々A1クラブのオンエアミーティングでやられるようですが。

 どうしてスプリットQSOなのか
 いわゆるペディションといわれる運用局は勿論ですが、限られた時間のなかで出来るだけたくさんの局とQSOする必要から生まれました。もし送信周波数と受信周波数が同じだったらどうなるでしょう。例えばあなたが無線機を持ってマルペロに行ったとしましょう。「CQ DX de HK0○×△」と送信したのに対して全世界からコールバックがありました。コピーした局を指定してレポート交換をしようとしますが、10分たってもあなたを呼ぶ局が途絶えません。やっと静かになったと思って呼び返す頃には相手の局はしびれを切らして何処かへ行ってしまっていた、なんて事になるでしょう。第一、1QSOが10分とかかかっていたら、出来るだけ多くの局とQSOしようという目的が果たせません。
 そこで受信周波数と送信周波数をずらす必要が生まれてきます。「CQ DX de HK0○×△ up」とか、「up3」とか付けます。「up3」とついた場合、21.013MHzでCQを出したとすると3KHz上の「21.016MHzから上を受信しますよ。」ということです。
 そうした場合に、A局は21.017MHzで呼びます。B局は21.018MHzで呼びます。C局は21.019MHzで呼びます。HK0○×△は21.018MHzのB局をピックアップして「B局、Ur 599 BK」とレポートを送信します。21.013MHzではHK0○×△以外の局は送信していないわけですから、混信はありません。ですからB局は自分に対してレポートの交換がなされたとはっきり解ります。またHK0○×△も相手のコールサインがわかった時点でレポート交換に入れますので短時間に多くの局とQSO出来ます。

 How toスプリットQSO
 現在市販されているほとんどのHF帯のトランシーバーでスプリットQSOは可能です。機種によって、送信周波数と受信周波数の信号を同時にスピーカーから出力できるものと、前者と後者をSWで切り換えて出力できるものがあります。同時に出力できるものをデュアルワッチ(2波同時受信)機能があるといいます。
 どちらが優れているか
 これは好みの問題となります。
 デュアルワッチを使ってみました。HK0○×△がスタンバイすると各局一斉に自局のコールサインを連呼します。HK0○×△が1局ピックアップした様ですが、連呼の嵐にマスクされて本当に1局ピックアップしたのかよくわかりません。デュアルワッチを切ってみました。HK0○×△の信号はよく聞き取れますが、ピックアップされている周波数は皆目見当もつきません。HK0○×△の信号がある程度強ければデュアルワッチは非常に有効に機能するでしょう。
 補足ですが、デュアルワッチの初期のモデルにはCWフィルターがMAIN側にしか装着できない機種があります。中古のトランシーバーを購入するときには注意が必要です。なぜかというと、仮にピックアップされている局をとらえることが出来たとしてもフィルター無しにCWを受信しているわけですからその周波数を正確に割り出すことは困難になります。
 次に切換SWのものを使ってみました。HK0○×△が「JA1○×△ Ur 599 BK」と送出したら、すぐさま送受信周波数のSWを切り換えてどこでJA1○×△が応答しているか受信周波数を変えながら捜します。SWは押している間だけ送受信周波数が切り替わるという機種が多いでしょう。素早さが命です。ただもたもたしているとJA1○×△の応答は終了してしまいます。SWを切り換えているので、HK0○×△の様子は受信できずわかりません。ですからころあいを見計らってSWを離してHK0○×△の様子を受信します。
 またJA1○×△の電波に対して自局が不感地帯にある場合は全く聞き取ることが出来ません。ですから、HK0○×△がピックアップした局のコールサインを聞いて、その局の電波が自局にも受信できるかの判断が求められます。この辺りになってくると、日頃の経験が物をいう世界になるでしょう。
 結局経験を積む事が大切
 デュアルワッチ機能があろうと無かろうとDX局がどこを受信しているかを探し当てる機能は大差は無いということになります。GETする為には、送信する周波数の選択のし方と、タイミングにかかっていると経験から思います。
 漫然と周波数を考えないで、送信していたのではピックアップされるまでに時間がかかります。コンディションも変化します。出来るだけ早い時間にピックアップしてもらう為にはDX局がどこを受信しているか知る事は重要なことです。

(JA4QQJ)